前職ではどんな仕事に就き、どんな経緯で転職されましたか?
大瀬新卒で事業会社に就職し、キャリアアドバイザーとして看護師の方の転職サポートを担当していました。求人開拓のため、病院や施設への営業もしていました。
伊藤保育の仕事とはかなり違いますね。
大瀬そうなんです。ただ教育や人のキャリアには興味があり、大学生の頃からコーチングの勉強もしていました。でも学校の先生にはなりたくなくて……父親が教育者だったので(笑)。それでも教育への関心はあって、大学では教育開発や、多様性を尊重する教育のあり方を研究していました。
伊藤そこから、どうして幼児や小学生の教育に興味をもったんですか。
大瀬多くの人が「自分のありたい姿」を思い描くことが難しい、という違和感です。自分の価値観をつくりあげているものって、幼少期の家庭環境や学校での生活が多くを占めていると思うんです。大人になるほどその価値観から抜け出すのは難しいですし、家族や社会が引いたレールの上を生きていると、自分がどうありたいかを考える機会が失われていく。それで代表の大谷に連絡して、九州まで見学に行きました。その際に、今後小学校もつくりたいという話を聞いて、義務教育である小学校を0からつくりたいと思い、1年で転職を決意しました。
伊藤初めてモンテッソーリの保育を見たとき、どう感じましたか?
大瀬衝撃でした! 異年齢で生活する教室の中で、子どもたちが兄弟のように共に生活し助け合っている。そんな子どもたちの姿を大人が信頼しているから、子どもたちの活動はとても自立しているように見えました。
伊藤人間とはこう生きるもの、というのを子どもたちが環境から学びとっているんですよね。赤ちゃん、幼稚園、小学校では興味関心が違うため、年代によるモンテッソーリの特別な資格があります。
大瀬小学校をつくるには国際免許が必要だったので、2022年4月に入社して、6〜12歳の資格を取りにいかないかと提案されて。8月末には代表と一緒にオランダで勉強することになったんです。
伊藤たいへんでしたよね。1年ほど行っていたのかな?
大瀬はい。0からモンテッソーリについて英語で学ぶ必要があったので勉強漬けの毎日でしたが、とても奥が深く、学びのパラダイムがシフトしていく感覚がとても楽しかったです。
伊藤モンテッソーリの資格をとった人は、みんなそう言うんですよね。苦しかったけど楽しかったって! 私は前職が看護師で、病院やデイサービスで働いていました。回復期リハビリ病棟に勤め始めたとき、妹である現在の会社の代表がモンテッソーリの幼稚園を立ち上げたんです。その影響で本を読むようになって、その知識を回復期リハビリ病棟で試してみたんです。
大瀬えっ!やってみたんですか?
伊藤患者さん本人がやりたいことを、満足できるまでとことんつきあってみたんですよ。そうしたら、みるみる回復して、会話ができなかった患者さんから最後には「ありがとう」と言ってもらえたんです。初めは偶然だと思っていたんですが、やればやっただけそうなる。これはただ事じゃないな、だったらちゃんと学ぼうと。2020年に看護師を辞めて、東京から九州へ2人の子どもと一緒にきました。
前職と今のお仕事の違いや経験を、どう生かしていますか?
伊藤180度違います。看護師は効率重視で全部スケジュール通りに進めなくてはいけません。逆にこの園は、効率重視は評価されません。「それって誰がしたいの?」って本質が問われるんです。もし散歩に行きたくない子を言葉巧みに誘って行かせても、その子の意志はどうなるのか、という疑問が残ります。
大瀬最初は戸惑いますよね。私は本質で生きるというのはすごく居心地が良くて。一般企業にいたときは、利益も目標も大事なので、時間をかけて人と向き合う時間がとれませんでした。目の前にいる子にどれだけ向き合えるか、それは何にも代えがたいものだと感じています。一方で前職では、組織における自分の役割を考えた行動やマネジメントも学べました。PDCAを回しながら営業していた経験は、立場や場所が変わっても自走していくために必要なスキルだったと感じています。
伊藤経験したことは全部身になりますね。小児科であらゆる疾患と向き合えたこと、新人指導、チーム医療をどうまとめるかなども学べました。
今の会社の社風や、働きやすいと感じるのはどんなところですか?
伊藤この職場の特徴は答えをくれないことですね(笑)。例えば、私が立場的に部下に指示したら、部下は思考停止の状態になります。私の考えよりもっといい意見があるはずなので、私が答えを言うのではなく、一緒に考え、一緒に体験し、もし上手くいかなかったら次を試します。
大瀬上の方々は、そういうスタンスをもっていますね。ただ、それは自分が自立しているかどうかだと思うんです。この会社で自分に何ができるか、どうありたいかを実現していくために、自ら考えて行動するのはとても大切です。一人ひとりが自立し、お互いの特性を生かしながら協働していく環境が整っているのは、社会的にみても理想的ですよね。
伊藤一方で、この世界に飛び込んだ直後は、私もそうでしたが戸惑うと思います。園としてのルールや「何分待ったらいいですか?」という質問が多く聞かれますが、それに答えはないんです。目の前の問題解決ではなく、その行動の本質的な理由にアプローチしなくては何も見えてきません。
大瀬私にとってこの職場は、子どもを中心にして、今ここでしかできないことがたくさんある場所です。実際に義務教育の小学校を義務教育ではない形でつくる、日本では当たり前じゃない学校を選択肢の一つとしてつくろうとしています。自分はどう在りたいか、社会でどんなものをつくっていきたいか、を日々問いかけながら仕事をしています。
伊藤私が考えるこの仕事の魅力は、毎日子どもたちから幸せをもらえることです。他人は私の思い通りにはいくわけがないというパラダイムシフトが起きて、この人にとって幸せなことって何だろうと接すると、子どもが自分のことをわかってくれたと満足して、こちらにも心から幸せをくれるんです。
大瀬本当にこの職場は幸せに満ちています。また、どんな個性もひとつの個性であると認められる場所です。子ども一人ひとりが違うように、大人も一人ひとり違います。会社の多様性のなかで、やりたいことや強みを活かして協働できる環境は、"こうあるべき"がないので自由で働きやすいです。