生きた学びはどうやったら可能になる?
中学生になると、いわゆる「職業体験」をいうものを数日体験する学校が多く見受けられます。
先生があらかじめ訪問先をリストアップし、OKをもらった職場に何人かの生徒を派遣する、というスタイルです。
派遣先の職場でもタイムスケジュールが組み込まれています。
スケジュールに沿った形で、中学生でもできそうなことを職場側が事前にリストアップし、実践します。
取り掛かりやすい方法をあらかじめつくっておくことで、無理なく、無駄なく、互いがストレスなく過ごせる時間となっています。
つまり、学生が生の現場に「主体的」に参加するのではなく、大人によってお膳立てされた職場という空間に足を踏み入れることで、参加した、体験したという事実のみを作りあげているのです。
では、社会人となり、実際に職場に赴任したとき、中学時代の職場体験は活かされるのでしょうか。
いわゆる「ルーティンワーク」と呼ばれる、マニュアルに沿ってお膳立てされている仕事については活かされることとなるでしょう。
一方で、職場という空間は、必ずしも予定調和された空間ばかりではありません。
日々刻々と変わる情報社会の中においては、予定通りにいかないことの方が多いのです。
「予定調和」されていない部分を、自分でどう乗り切っていくのか。
ここで、活かされるのがこれまでの日常生活で培ってきた「自己選択・自己決定」と、「斜め上」の人の存在。
親や先生、地域の大人たちがやっていることを見よう見まねで実践し、失敗と成功を繰り返しながら、自分のやり方を構築していく。これが「学び」です。
自分なりの「学び」を構築していくことで、たとえ困難な状況に陥ったとしても、それまでの経験を活かして突破することができるのです。
そのためには、お膳立てされた予定調和の職場体験に加え、予測不能な体験も経験させてあげるとより選択肢が増えていきます。
たとえば、職場体験をするにあたり、学生が興味を抱いている、気になっている人に自ら電話で「一日、かばんもちをさせてください」とアプローチをかけてみる。
OKが出たら、現地に赴き、一日同行する。
同行する中で、先輩の仕事に対する姿勢や所作を自分の目で見て確かめる。
先輩のいいところを目にやきつけて「自分ならこうする」をシュミレーションする。
この行程は、子どものころから培ってきた「おしごと」と呼ばれる自己選択と自己決定の積み重ねに重なる部分があります。
人生の先輩のエッセンスをふんだんに取り込んで、そこに自分の「自己決定」を織り交ぜていくことで、不測の事態にも対応できる、「やわらかあたま」の持ち主へと変身していくことでしょう。